『スカイ・クロラ』をまた観たくなって再度の出撃。

シネコンまで夏の日の午前、ちょっと歩いた。
「ほら急がないと始まっちゃうよ」
「じゃっ、走ろ!」
「いやよう、お母さんこんな靴だもの」
「走らないと急げないよう」
そんな会話をしてる母子に追い抜かれ、てくてく。
かわいいなあ。
仲良いなあ。
観るのは『スカイ・クロラ』じゃないだろうなあ、
ポケモンかしらキバかしら?
お母さん日傘さして薄い布の黒でまとめてておしゃれで、
おとこのこも可愛くって、お母さんのこと大好きなんだろうなあ、
このこもやがて「るせーばばあ!!」とか詰る、
アドゥレセンス黙示録てき反抗期に突入すると思うと
なおさら刹那くって良いカンジです(↑勝手に決めんなw)♪
・・・
カウンタでチケ取り。
最前列でお願いします、と言ったら受付のおねいさんに
「かなりスクリン近くになりますがよろしいですか」と念をおされた。
はい、と返事する。
それでいいのです。
空を。
感じたかったから。
あの空に入ってしまうほどに。
・・・
プロログの空中戦、そしてオプニング。
楽曲の終わり頃からCGの滑走路が近づいてくる。
シインが変わってワンちゃん。
人間っぽく寝そべってて、
ありえないだろう擬人化表現をするんじゃないかって一瞬の思いが、
一回めに観たとき無意識下に入り込んだことを思い出した。
ここで始めて、
さあこれから、アニメションが始まるよ、と押井監督に言われたよう。


空と地上での、
表現技法の違いを批判的にみて齟齬を言い立てる人もいるけど、
これ、『スカイ・クロラ』、
そもそもそういうお話しなのじゃないかしら。
ここから表現意図は見出せない?
もし技術がもっと進んで
平面っぽくても凄い空中戦か、
逆に人の温もりっぽいものが感じられるCGによる人間表現が
安価に製作可能になったら、
押井さんはこの映画を修正するかしら。しないんじゃないかな。
いま、
"人の温もりっぽい"て書いたけど
キルドレたち、特に草薙水素にはそんな表現、必要ないしね。
逆に、
原作と性設定が変わって「ママ」になった整備士の笹倉さんや、
大人たちには人間っぽさがいるんだけれども
わたしたち観客は
一瞬静止したりもするリミテッドアニメションのキャラクタを、
"人"として認識する訓練を積んできた。知らず、知らず。
そしてこの映画では
水素たんを、あっこの人も人間だ、と思う瞬間も必要であるわけで、
お話しは
ヒトとモノの境界が中和されている、"あわい"の場で進んでいかなくちゃならない。*1
・・・
同様に声優さんと*2俳優さんで分けられている、
キルドレキルドレ以外の、声質の差も味わうべき。
もしたとえ偶然の結果であったとしても、
菊地凛子の草薙は、ぜーんぜんOKじゃね?と言いたい。
あれを下手とか言うのは、そりゃねーだろってカンジ。
むしろ、
栗山千明たんの技量があそこまで声優っぽかった*3是非が問われるべきw
て、
それも「そんな三ツ矢碧だから」て答えもあるんですけどね。
(しっかし昔のアニメージュとかではベテラン声優さんたち、
 俳優業の仕事の中のひとつが声のお仕事、
 というような捉え方をされてる方々が多かったような記憶があるのになあ。
 生身の生理を参照しない方向の"型"へ進んで来ちゃったんでしょうかねえ)


そして戦争。空での空中戦。
松本零士先生だと「被弾時に流れるオイルは戦闘機の血飛沫であり悲鳴だ」って、
これもまた偉大ではあられますけど
キルドレたちのたたかいにはやっぱり、冷たいようなカンジが必須だもの、
と思う。


スカイ・クロラ』の世界の、キルドレたちの戦争は、
この世界の、わたしたちにとっての、


たとえばゲームだ。


映画の中の分裂を見るより、現実における断層を認識しよう。
その非連続性に自覚的であること。これ重要、
行って戻って、
何のつじつまを合わせているのか、その問い。
・・・
スカイ・クロラ』が鏡なら
鏡なら、
見えてるものがどのように逆さになってるか、
整理してないと正しく髪を切るのもむつかしい。


キルドレたちは死なない、らしい。
殺されない限り。そして歳を取らない(らしい)。
キルドレたちがいる世界では戦争はゲーム、ただし人は死ぬ。


わたしたちの世界にはキルドレはいない。
若者も必ず歳をとり、
戦争はあり続ける。けれどこの国は少なくとも戦時下、ではない*4
・・・
でも実は、
「歳をとる」って経験を欠いていることこそが、若いってことなのじゃあないの?
って思うわけで。
それで現実の若者はキルドレに近くなる。
歳をとらないなんて思っちゃいない、って言葉では言えてもね。


歳喰ってたってそれだけじゃ偉いわけでも優れてるわけでも全然ないけど
ああ時間は流れるものだ本当に、
なあんてしみじみ感じちゃえる経験値、その程度のものはたしかにあって、
(↑に書いたおとこのことお母さんに対する見方でも
 若かったら「もうすぐ反抗期だろうな」と自分の経験からとらえちゃったりするかもだけど
 もちょっと後のステージに進むと
 「反抗期すぎたらまあそんなにイラつくこともなくなるよな」とかいう視点も、
加わっちゃったりするように)
何か、は確実に変わっていくのだからどうか、
ギリギリの絶望に浸り切って、
妙なカタチで(無差別殺人とか)ダメダメな戦争始めるより
やりすごすことを考えようよ、
と言える。
と、言いたいのかどうかは分からないけれど。
でも、言う義務はあるのかもねー。ま、基本ワカモノには関心ないんですけどね。
でも自分の年金の心配はしてます(←


えっと、
んじゃー今回の結論ってば、


「君らはキルドレじゃないから安心しろ」、ですかね?
(誰に言うともなくw )


・・・あ、あ、あ、アレっ?!


■■■■■

*1:そんなことを思うと『スカイ・クロラ』はまさに、押井守の『イノセンス』の次に来た仕事だなあと感じる。

*2:どちらかというと若手に分類されるだろう

*3:さすがヲタクちゃん♪

*4:、筈ではある、と続けちゃうとまた、めんどくさいことを考えなきゃw