ホラー掘れば彫るとき放れ。

 短いのがすき、やっぱり短いのがなにもかも、短いのがいっとうに冴えてしまうのだ彼は、なんてそんなことを、ぶつぶつと言いながら、

川上未映子「すばらしい骨格の持ち主は」
           新潮[第百六巻第七号]新潮 2009年 07月号 [雑誌]91頁〜)
や。
文体なるものがなんなのかなんやかんやまったくもって言えるほど
批評理論、かなんかに通じたりとかもっちろんしてないわけであれデスけれどもえっとそこはほれ、
ここはほれ、
「短いの」、
を「短篇」とかつい言ってしまうのは要領が良くなって、
そおいうことではないの、
なんである、たぶん。
失ってしまうのだ、
体験を。
記憶を無くさなければ見られなかった、ほんとうのことのように。
・・・
言葉は、剥き出しのものを包むように私たちを護り
護られて私たちは痛みのことが分からなくなる。

ストーリーじゃなくて、絵の見せ方にも構造ってあるんですよ。たとえば、ホラーものだったら、まずギャーッ!って驚いてる女性の顔を見せる。それで「なんで驚いているかというと」ということでクリーチャーを見せるわけです。並んだ2カットというのは映画の最小単位だから、映画全体がそうであるように、疑問→答えという順番に並ばなくてはいけない。でも、よくあるんだよね、クリーチャーを先に見せて、それから驚きの顔を見せるカットつなぎが。これだと「なぜ?」という部分がないから、観客のエモーションを刺激しないんだよね。

神山健治著『神山健治の 映画は撮ったことがない』神山健治の映画は撮ったことがない~映画を撮る方法・試論 (STUDIO VOICE BOOKS)141頁)


ここでは神山監督は、
答えを先に提示しちゃったら面白くならない、観客の興味を失わせる、とおっしゃってるたぶん、

もしかしたらそれは怖いか怖くないか、ということと微妙にズレてるような気がしないでもないんだけれどもやっぱ、
正しい順番のが正しく怖い、わけである、んー。
んー?
でここであれれ?とか思いそうになったのは現実の場合のことを考えてですよ、
あれれ現実でクリーチャーに遭遇したバヤイ、
いきなりこそが、めっさ怖い体験じゃね?
とか思いそうになったわけでいきなりそいつに出遭ってしまうのがおそがいがーって
そういうんが現実と映画の差だ、かなんか
うっかり言ってしまうそうになったのやけどでも違った、よく考えたら。
現実の場合でもまず先にただ、


驚くんだって!
びびるんだって!
怖がるんだって!
ギヨとするんだて!!


たとえ先にクリーチャーを目撃してても。てかそれがクリーチャーじゃなかった場合もぜんぜんある、
つうか今まで生きてきて全部の体験そうだよ、
クリーチャーに出遭ってないから今まで生きてこれたんだよう、よう、よう、ようようようよう・・・
ともかく。
それが何かを認識するのはとりあえず、
反応してからなのだ、たぶん。
そういうのが現実や虚構の、体験のホント。
でも後になってそれは
"クリーチャーと出遭ってしまった*1体験"とか
"クリーチャーと間違えちゃったものと出遭ってしまった体験"とかのように
語られがちになるのだろう、
そのときの言葉の機能はきっと
私たちを剥き出しのものから護ってきっとやさしい。


怖さ、
のことだけでなく言葉は
使ってしまうと私たちを実はそのことそのものからズラして行くように思う。
それはたぶん、
言葉の言葉たるリンク機能が、
個別こべつのただそのことを、無理くりにでも自然にでも
何処かへ定義づけてしまうからだと思うの。
たとえば太宰治を読む。
やっぱり冴えてるの、とおもう。
ああやっぱりこの彼の短いのが、とおもう。
おもって川上未映子でないわたしのところにはつい、
太宰治はやはり短篇がすばらしい」
なんてーのがやって来られたりするのである。わけである。
べつにそれでかまわないっちゃーかまわないのだけれどもそれは
「短いのがすき、」の感覚を
忘れて埋めてくるんでしまうということだったり、する。


未映子さんの小説は
驚く女性の顔を先に見せるが如きところがきっとあります。
・・・
http://www.occult-movie.com/


たいへんにすばらしいものおみたのです
白石晃士監督『オカルト』です
なにかわからないとただこわいが
なにかわかるとしみじみこわい
じんせいにつかれているひとはぜひみよーみてください
あれしたりこれしたりしたら地獄やぞ地獄やぞ地獄やぞ地獄やぞ
ぜひわかれ
あひらわま


この映画観る直前、マジにめっさシンクロ現象におそわれて
映画に出てくる多くの符号に遭遇したりして
すっごい電波受信状況やったなあ思うけど
変な方向には思い上がらないようにしたいものです、
わたしがぜんぜん別に救世主じゃない人たらんことを。非(?)のぶれすおぶりーじゅ♪


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*1:けど生き延びれた(泣