げろんちょ突破に虹を見る冒険
それなのに、歌の中でそんな言葉を聞いたことは一度もなかった。おそろしくデリケートでしかも大胆なやり方で、忌野清志郎は誰にも摑めなかったリアリティを摑んでみせたのだ。
リアリティに関して、清志郎はもっとシンプルなやり方をみせたこともある。あるライブで、曲を始める前のカウントを「ワン・ツー、ワン・ツー・さん・し!」と叫んで、聴衆に衝撃を与えたのだ。途中から日本語になってしまうその叫びが、カウントとは「ワン・ツー・スリー・フォー!」だと思い込んでいた我々の耳におそろしく新鮮に響いたのだった。その瞬間に演奏は、そしてこの世界は、ただ一度きりの〈リアル〉なものに変わったのである。
(穂村弘著『短歌の友人』(河出書房新社)080頁より)
こないだのその深夜、
数日前から読んでいた短歌の本の、
「第3章 〈リアル〉の構造」と書かれた一枚をめくると
〈リアル〉でるために
とある横に
歌詞が出てて名前があって、声もきこえた。
いま・ここが、ぶ厚くなってて。
それでは行きますか。
「ワン・ツー・さん・し!」